阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクト〜自然・人・牛、その未来のためにできること〜

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最終更新日:2018/11/14

Orange/オランジュ(東京都新宿区)

季節の食材をたっぷり使ったこころとからだに優しいレシピをご紹介しています。

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阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクト〜自然・人・牛、その未来のためにできること〜
2021/2/23 19:29 UP

料理教室Orange/オランジュ、阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクトオンラインイベントを開催いたしました。
 
阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクトのあか牛たちは阿蘇の草資源を生かし、
阿蘇の草原で一年中、新鮮な草だけを食べて牛本来の育ち方をしています。
起伏のある野山を自由に歩き回ったり、気持ちの良い風に吹かれながら日向ぼっこをしたり、牛はすこやかに育ちます。
一年を通じて牛を養うだけの草を蓄える阿蘇の草原を有効に活用した、自然にもあか牛にも、そして人にも優しい育て方です。
 
先日草原牛たちに会いに南小国に行ってきましたが、
熊本で生まれ育った私にとって普通だと思っていた阿蘇五岳や外輪山の急なむき出しの斜面、
そこに植生するすすきの風にはためく風景、そしてそこで草を喰むあか牛の姿、
全く普通ではなく、世界的に見ても稀有な土地柄だったことを改めて噛み締めたところです。
 
当日は熊本から阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクト代表理事の橋村義宣さん、元東海大学農学部の服部法文先生にプロジェクトのコンセプトやあか牛の生態、味わいの特徴などをご説明頂きました。
そして事前に受講者のみなさまにお届けしたあか牛のステーキの上手な焼き方を、
カルネヤ高山いさみシェフにレクチャーいただきました。
 

 
まずは代表理事の橋村さんより、理念や意義についてお話しをいただきました。
 
お話しいただいた内容をまとめてみました。
・阿蘇の草原は22,000haあり、有効に使うことのできる日本の牧地総面積の1/3を占めていること
・その特徴を生かし、阿蘇では1000年も前から牛や馬の放牧がされてきたが、近年働き手の高齢化、サシ至上主義などの背景から放牧という育て方をしなくなってきたこと
・完全放牧の技術が消えてしまう前に後世に技術を伝え、阿蘇の草原の景観を維持したい
・このままではいずれ来るかもしれない食糧難の時代に向け、いま考えて、そして実際にいま行動を起こすことが必要ではないだろうか
 
橋村さんは穏やかに伝えるべき言葉をひとつひとつ丁寧にお話しになります。
 

 
そして服部先生から、実際にどのような育て方をされているのかを伺いました。
 
東海大学農学部では、「草原あか牛ecobeef ASO」という、阿蘇の草原を利用した放牧あか牛の生産技術から流通までの課題を学ぶ取り組みがなされています。服部先生はその中核を担っていらっしゃいました。
現在、この南小国の草原でも東海大学の牛を一部預かって育てていらっしゃいます。
 
・橋村さんの素朴な疑問「草だけで牛肉は作れないのか?」から始まったプロジェクトであるが、その社会的な意義は大変大きいこと
・多くの日本人が牛肉として食している牛は草原で育っているとイメージしているが実際はそうではなく、牛舎の中で産まれて母牛とはすぐに離され、人工乳で育ち、その後は配合飼料を食べて、一生を屋内で過ごす牛がほとんどであること
・牛特有の長いザラザラした舌で蒼い草を巻き取ってちぎって食べることをしたことのない、すなわち牛本来の食物の食べ方をしたことのない個体が一般的な食用牛として販売されていること、そしてそのことを食べている側は知らないこと
・霜降りが良しとされる食文化が発展してきたため、穀物飼料を与えビタミンコントロールをして肥育をさせる、そんな育て方が肉牛を飼うということのスタンダードになってしまっていること
 
・牛を牛らしく育ててることはできないだろうか?
 
・阿蘇の原野はすすきや野芝といった特有の植物が多く生息する土壌である
・世界にはグラスフェッドの肉牛は多くいるが、その中でも阿蘇の野草を食べているあか牛はとても珍しく、ここでしか得られない肉質の牛肉であること
 
服部先生が東海大学時代から取り組まれていることは、現在の肉牛の肥育現場とは全く違いますが、言ってしまえばとてもシンプルです。
 
牛が牛として成長しているのです。
 
ただ一方で阿蘇の草原を守り牛本来の育ち方をした牛の肉は、
サシの入った牛肉とは違い、放牧しているため、焼くことが難しい牛であること、
だからこそ、バックグラウンドを知り、理解してくれていシェフを増やしたい、
そして多くの人に、牛本来の美味しさとは何かを知ってほしいということでした。
 
多くの知識と経験をお持ちでいらっしゃる服部先生だからこそ、端的な言葉から伝わるものが何倍にも増幅されます。
 

 
そして実際にあか牛のステーキの上手な焼き方をカルネヤ高山いさみシェフにレクチャーいただきました。
 
いさみシェフは目の前にあるあか牛のステーキの水分量、脂の質、香りなどの情報を整理して、
その肉の良さを最大限に引き出す焼き方を教えてくださいました。
 

 
おそらく受講者の方がこれまで学ばれたことのない焼き方であったと思います。
 

 
阿蘇の草原の香りに、サカエヤさんの手当てにより程よい熟成香が加わり他では得られない香りを漂わせます。
肉質も適度な噛み応えとしっかりとした旨味があり、
バランスのとれたいつまでも食べていたいと思わせる仕上がりでした。
 

 
ご参加のみなさま本当にありがとうございました。
阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクトのことを知っていただき、
そして自然や牛の育て方について考えてもらう機会になりましたら幸いです。
 
橋村さん、服部先生と連携して、この先もご紹介する会を継続して開催していきたいと考えています。
 

 
自然、人、牛、それぞれの未来を守りたい、
これからも微力ではありますが、私にできることは何かを突き詰めていきたいと思います。
 

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先生情報
藤田 純子
藤田 純子
管理栄養士/料理家   

管理栄養士、料理研究家、教育学修士。ワインエキスパート、きき酒師、アンチエイジング指導士。大学院修了後、埼玉県上級職員として県立病院や保健所に勤務。退庁後、病院、保健相談所、国立大学等に勤務。2012年日本最大級のレシピコンテスト「おかずの星」で応募総数約17,000件の中からグランプリ受賞。2013年7月から料理教室を主宰。製品開発、メニュー開発、栄養指導業務、雑誌等へのレシピ提供も行っている。



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