幸菜庵 茶懐石料理教室 和菓子教室

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(東京都江東区)

茶懐石料理「焼物」とは

三ッ山 幸子 先生のブログ 2025/6/18 13:10 UP

ルールと心得、茶事で焼物を用意するなら
レシピ付きでお勧めの魚をお伝えします
 
茶懐石の献立、「焼物(やきもの)」は
焼き魚です。
 
本記事では、茶事で焼物を用意する方に
向けて、基本の決まりごとから
レシピまでをわかりやすくまとめました
はじめて調理される方にも安心して
ご覧いただける内容です
 

 
 
焼物とは?
 
焼物は、茶懐石の一汁三菜のうち「三菜目」に
あたるお料理で、主に焼き魚を指します
 
格が高く、魚の扱いや盛りつけにも繊細な
決まりがあります
 
 
 
焼物の4つの決まりごと
 
① 一人分の切り身を用意する
 
魚は客の人数分に切り分けて焼きます
 
魚は大皿に盛り付けられ、
裏千家では、青竹の「中節」を
とり箸として添えます
 
客は取り箸を使って一切れずつ
向付へ取ってお隣へ回します
 
 
② 骨を抜いてから焼く
 
小骨までしっかり抜いて、
食べやすい状態にしてから
焼くのが決まりです
 
骨の煩わしさなく
味わっていただくことが
"おもてなし”です
 
※盛りつけは魚だけ
紅葉や食べられない飾りなどは
添えません
 

 
③ 鮎だけは一匹まま供する
 
姿焼きが許される
唯一の例外が「鮎」です
 
6月の解禁を待って
初夏〜盛夏の茶事に使われることが多く、
頭から尾、骨、内臓まですべていただけるよう
じっくり焼きます
 
子持ち鮎の場合は、
頭と尾を落とす場合もあります。
 
④ 揚げ物は焼物に含まれない
 
アジフライや天ぷらなどの揚げ物は、
茶懐石では焼物に含まれません
 
焼物は“焼く”調理法に限られます
 
 
 
焼物:どんな魚を選べば良い?
 
■白身魚(鯛、鰆、スズキ、甘鯛など)が
 おすすめです
 
■春は鰆、夏は鮎、秋はかます、甘鯛や太刀魚、
冬は鰤(ぶり)や鱈(たら)なども
地域の旬の魚を選びましょう
 
※脂が多すぎず、身が崩れにくいものが
 扱い易いです
 
 
 
基本の焼物レシピ:鱒の幽庵焼き(骨抜き済み)
 
 

材料(4人分)
   •     鱒や白身の切り身 4切れ
      (各40~50g程度)
   •      醤油 大さじ2
   •      みりん 大さじ2
   •       酒 大さじ2
   
下準備
   1.     魚の骨抜きを使って小骨を丁寧に抜く
   2.     上記の調味料を合わせ、魚を
   40~60分ほど漬ける
   3.     漬け終えたら、ペーパーで汁気を軽く拭く
 
焼き方
  •      魚焼きグリル、またはオーブン(180度)で、
   両面に焦げ目がつくまで焼く
  •      盛りつけは、魚のみを大皿に並べて供する
 
※バリエーション
季節により柚子は漬け込み用やトッピングに
焼き上がりに木の芽を乗せると
木の芽焼きになります
 
 
盛り付け・出し方の実例
  •      土物の皿や浅めの大鉢に人数分の魚を
  盛り付ける
  •      青竹の中節(取り箸)を右手前、
  斜めに添える裏千家の場合)
  •      器の余白を生かし、潔い美しさを心がける
 
 
 
焼物調理する折に心得たいこと
  •    「焼き立てを提供」することをめざします
  
  都合上、事前に焼いておく場合もあります
  その場合は、暖め直します
 
  •      器の選び 取り箸(中節)の準備
  大皿に魚だけを美しく取り分け易く盛り付け
  ましょう
 
  •      焼きの香ばしさと塩加減のバランスが、
  料理全体の印象を左右します
  塩は控えめにして素材の旨味を引き立てましょう
 
 
 
おわりに:焼物の一皿に“茶の心”が宿る
 
焼物はシンプルな料理でありながら、
客への心配り、
季節の意識、
素材の扱い、
すべてが表れる繊細な一品です
 
余計なものを削ぎ落とした
その姿に、茶懐石の美意識が
凝縮されています
 
茶事で焼物を任されることは、
決して難しい試練ではありません
 
むしろ、お客様と向き合う喜んでいただく
“心使い”が大切です
 
ぜひこの一皿で、お客様の記憶に
残る味と時間をお届けください

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